平成生まれが昭和・90年代を語る会「語るブログ」

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ニッチク君がゆく 第八回 ナニワからコンニチワ

こんばんは。ニッチク君です。

不定期連載「ニッチク君がゆく」第八回目は「ナニワからコンニチワ」と題しまして、大阪で生まれた奇跡のレーベル「ローオンレコード」について。

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浪曲師のタニマチ(後援や無償スポンサーの隠語)であった加藤精一が設立したレコード・レーベルが「ローオンレコード(Roon Record)」。"浪曲"と"(河内)音頭"の合成語であるローオンからは、浪曲河内音頭などをメインに1985年に消滅するまでアルバム約350枚、シングル約150枚、その他カセットやヴィデオテープなどもリリース。個人的なレーベルからこれほど精力的なリリースが行われていたことが驚きですし、加藤氏の浪曲や上方の芸人に対する情熱のほどが窺えます。

近年メディアプロデューサー澤田隆治さんの尽力により、埋もれていたローオンレコードの音源の一部が陽の目をみることとなりました。ミソラレコードからは宮川左近ショー浪曲ショウ、コロムビアから一連の初代京山幸枝若浪曲河内音頭がまとまった形でリリースされています。

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そして、2010年にはP-VINEから「ローオン歌謡列伝」と題したローオンレコードの歌謡曲に焦点をあてたコンピレーションが発売されています。

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当時の上方芸人が吹き込んだ楽曲は、演歌や歌謡曲、ノヴェルティ・ソングまで多種多様。芸人が吹き込んだ「昭和の珍品」的な範疇には収まらない、凄みのあるグルーヴ、さらっと聞き流せないドス黒さが音源から溢れ出ています。

私お気に入りの曲をいくつかご紹介。

幻のブルース フラワーショー(フラワーショウ)
作詞:藤本卓也/作曲:藤本卓也/編曲:高橋 城

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フラワーショウは華ばら、ぼたん、ゆりの3人による浪曲漫才トリオ。「道頓堀行進曲」の替歌がテーマ曲。浪曲で鍛えた喉を活かした歌、ぼたんとばらによる軽快なかけあい、そこに絡むスローなゆりのボケは今日でも大いに笑える傑作漫才。音楽ショウとしても魅力的な存在でした。

本曲は佐久間浩二が歌った「まぼろしのブルース」のカバー。同曲は勝彩也のヴァージョンでも有名です。凄まじいグルーヴ感を醸し出す激しい演奏に、存在感の塊のようなばらのドスの効いた歌声が絡みつく傑作。とにかくスゴい。


ろうきょく炭坑節 芙蓉軒麗花
作詞:明石寿恵吉/作曲:北本正義

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(画像は昭和31年マーキュリーのSP盤)

芙蓉軒麗花は戦前・戦後の一時代を担った浪曲界のスター。浪曲と平行して、自らの一座「麗花ショウ」を率いて活動も行っていました。

本曲は昭和31年にリリースされ、"テケレッツのパッ"というコーラスがうけて空前のヒットとなりました。ローオンではアレンジや歌詞をリメイクしての吹込となりました。豪快な節回しは変わらず、歌詞にはオリジナルにはなかった「河内十人斬り」が採り入れられたりとオリジナルに負けず劣らず素晴らしい出来上がりです。そして、バックの演奏は、フィリー・ソウルを彷彿とさせる、ストリングスを華麗にあしらったスウィートな仕上がりに。そこに豪快な芙蓉軒麗花の節回しが絡み、ギャンブル&ハフも真っ青なソウル・ナンバーとなっています。

他にも笑福亭仁智による漆黒ファンキー・ディスコ「ラブリー・ベイビー」や浪速のハウリン・ウルフ松島一夫が唸る「あゝおやぢさん」など凄まじい熱量の名曲が数々納められているアルバムです。歌謡曲ファンの方々は是非一度お手にとって、ローオンレコードが生み出した奇跡の数々を味わってみてくださいまし。

長くてまとまりのない文章になりましが、本日はここまで。では、また逢う日まで。